トップページへ戻る

幾何学的幽玄 マティス小論

朝日新聞が人生相談コーナーの広告にきたむらさとしのイラストを使っていて、いつもつい見てしまう。
僕はマティスの金魚鉢が好きで、あの中には西欧思想の主観客観の問題がある。僕は絵画や音楽の技巧に疎いからそこは作家としてではなく美術史的な技法の追究としてしか考えられないがそれでも感心する。
僕が震える:(´◦ω◦`):のは西欧思想におけるロゴスとしての幾何学的な視点で、これが金魚鉢を通して自然科学の観察や実験へ、またモロッコ旅行と時期は違うかもしれないがオリエンタリズム精神への接近になっており、近代を通過した現代人としての同時代性の問題意識を僕はマティスに見ている。
さらに彼がそこでやったことの一つ、色彩やモチーフに、ロゴスに対してエモさを入れること。スーザン・ソンタグを僕が曲解する「芸術には理屈や思想のほかに、その作品特有のエモさがあり、これが実は肝要なのだ」という芸術解釈において、マティスの金魚鉢は高みに昇華したのだ。
老荘や禅の画、盆栽なんかを見て、そこに幽玄を見るのはよくあることだが、僕もマティスの金魚鉢という近代西欧美術に「幾何学的幽玄」(!)を見出しているわけだ。これはもはや思想のデペイズマン、ロートレアモン伯爵のいう解剖台の上でのミシンとこうもりがさの不意の出会いのように美しい。これは僕ら現代人の東西思想比較論だ。


トップページへ戻る